歳を重ねるごとに、体力の衰えを感じるのと同じように、私たちの聴力もまた、時間の経過と共に変化していきます。この自然なプロセスの一環として、多くの人が経験するのが加齢性難聴です。今回は、その原因から始まり、症状の特徴、チェック方法、そして対処法に至るまで、加齢性難聴について幅広くご説明いたします。
加齢性難聴とは
年齢による聴力低下を加齢性難聴または別名老人性難聴と言います。後ほど詳しくご説明しますが、加齢性難聴は有毛細胞の減少によって発症します。具体的には50代から緩やかに聴力は低下し、70代を過ぎると約半数の方が加齢性難聴になります。加齢性難聴の初期症状には、電子音に気が付かない、耳鳴り、テレビのボリュームが大きくなるなどが挙げられ、緩やかに低下していくため本人の自覚が遅れることも多いです。
加齢性難聴のチェック
聴力の度合いによって難聴の程度は分類されます。難聴の程度は、音の大きさ(db)を目安にして「軽度難聴」「中等度難聴」「高度難聴」「重度難聴」の4つのレベルに分類されます。下記に簡単な聴力チェック表を準備しましたので、レベルを確認してみてください。
難聴程度 |
デシベル |
自覚 |
軽度難聴 |
25〜40 |
小さい声やささやき声が聞き取りにくい |
中等度難聴 |
40〜70 |
普通の会話が聞きづらい |
高度難聴 |
70〜90 |
大きな声でも聞こえにくい |
重度難聴 |
90以上 |
耳元での大きな声も聞きづらい |
また難聴は表面上の病気でしかなく、他の大きな病気を患っているケースもあります。健聴であったとしても聞こえが悪くなったと思ったのであれば病院の受診をおすすめします。
加齢性難聴の原因
加齢性難聴の原因は、有毛細胞の減少です。有毛細胞は耳の奥の蝸牛内にある細胞で、外から届いた音を電気信号に変換し脳に届ける役割を担っています。有毛細胞が減少すると、脳に届ける音の数も減り結果として聞こえが悪くなります。有毛細胞が減少する原因は様々ですが、クラブやパチンコ店といった大音量での損傷、遺伝的な要因、感染症などが挙げられます。加齢性難聴では、生まれてきてから今まで聞いてきた音によるダメージをが聴力低下を引き起こしています。そのため加齢による聴力低下は誰しもが起こり得る難聴と言えます。
高齢者の聴力低下は他にも
加齢性難聴とは別に高齢者の聴力低下に耳垢詰まりがあります。本来耳には耳垢を外へ押し出す自浄作用があるのですが、高齢者の方は自浄作用が低下して耳垢が溜まりやすいです。耳垢をとることで聴力が回復したケースは少なくありません。このように音を伝える箇所が原因で発症する難聴を伝音性難聴と言い、感音性難聴の加齢性難聴とはまた別の難聴です。伝音性難聴は薬や手術などで改善することがあります。
加齢性難聴の特徴
加齢性難聴の特徴は、高い音が聞こえにくい、聴き間違いが増えるなどが挙げられます。これは、高い音を聞き取る有毛細胞が多く減少しているためです。有毛細胞は蝸牛内に存在すると先ほど説明しましたが、蝸牛というのは名前の通りカタツムリのような形状をしています。入り口の有毛細胞が高い音を奥に行くにつれて低い音を拾います。音の出入りが多い入り口は出口と比べてとくに損傷が激しいのです。高い音が聞こえにくくなりと、高音が聞き取れないだけでなく、聞き間違いも増えます。これは高音域に該当する子音(sやthなど)が聞き取れていないのが原因で佐藤さんが加藤さんに聞こえたり、白いが広いに聞こえたりします。
加齢性難聴の改善や治療法
一般的に加齢性難聴の改善に有効であるのが補聴器や集音器の装用です。一度死んでしまった有毛細胞は再生しません。iPS細胞の研究が進むとどうやら可能性があるようですが、いまの医療では人体に応用されていないようです。そのため現状、加齢性難聴への有効なのが補聴器や集音器ということです。補聴器や集音器が周囲の音を増幅し、脳に届ける音の情報を増やします。器種によっては音域ごとの分析判断も可能で、ご高齢者が苦手な高音域だけを増幅することもできます。補聴器と集音器の違いについては下記の記事に詳しくまとめていますので興味のある方はご覧ください。
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補聴器と集音器の違い
有毛細胞の回復と損傷を防ぐ
死んでしまった有毛細胞を再生することはできませんが、損傷した有毛細胞を回復させる方法はあります。TSCというトレーニング方法で、聞こえるか聞こえないかと言う小さい音を入れて有毛細胞を刺激し回復させます。毎日30分間、2週間ほど聴取したところ10〜50デシベルほど聴力が回復したというデータがあります。とはいえ、今ある有毛細胞はこれ以上減らさないように、大きな音を聞かない、細胞を老化させる活性酸素を増やさない生活習慣にするなどして有毛細胞を守る必要があります。
加齢性難聴による補聴器や集音器の購入に関する助成金
補聴器の購入に助成金はありますが、集音器の購入はありません。補聴器購入に関する助成金は次の2つがあります。
障害者総合支援法による補装具費支給制度
障害者総合支援法による補装具費支給制度は加齢性難聴に関わらず、聴力のレベルが規定以上であった場合に障害者手帳の交付をもって申請できる制度です。等級によって助成金は変わりますが、3万円から14万円を上限として1割の自己負担、もしくは自己負担なしで補助して貰えます。
自治体独自の支援制度
自治体独自でご高齢者の補聴器購入を支援していることがあります。主に障害者総合支援法に該当しない加齢性難聴の方を対象です。自治体によって値段は様々ですが3万円前後が助成される傾向にあります。こちらは使用者が住民票に置いている自治体によって違います。実施の有無はお住まいの自治体にお尋ねください。 また、助成金とは違いますが補聴器の購入費は医療費控除できます。控除額は所得によって違いますので、減税などで還付されます。詳細はお住まいの税務署にお尋ねください。
まとめ
加齢性難聴についてご説明しました。聞こえが悪くなったと感じた場合、まずは病院の診察をおすすめします。病院の診察後正式に加齢性難聴と診断された場合、いまの医療では補聴器と集音器がもっとも有効的です。当記事があなたのお役に立てたのであれば幸いです。
参考サイト きこえのお助け隊|有毛細胞は再生できる?回復方法は?
https://kikoe.ne.jp/hearing-loss/cell.php